交通誘導警備の現場において、「ヒヤリハット(一歩間違えれば大事故になっていたかもしれない『ヒヤリ』とした、あるいは『ハッ』とした事例)」を把握し、対策を立てることは、事故を未然に防ぐための最も有効な手段です。
労働災害の有名な法則「ハインリッヒの法則」では、1件の重大事故の背景には、29件の軽微な事故があり、さらにその背景には300件のヒヤリハットがあるとされています。
つまり、300件のヒヤリハットを潰していくことが、致命的な事故を防ぐ鍵になります。
交通誘導警備における代表的なヒヤリハット事例と、それを防ぐための具体的な対策をまとめました。

交通誘導警備でよくあるヒヤリハット事例
1. 一般車両・通行者に関するヒヤリハット
誘導の無視・見落とし: 遠方から進行してくる車両が、警備員の停止合図に気づくのが遅れ、急ブレーキをかけて止まった。
強引な割り込み: 交互通行の誘導中、待ちきれなくなった車両が勝手に発進し、対向車と正面衝突しそうになった。
「ながら歩き」の歩行者: スマートフォンを見たり、イヤホンをつけたりしている歩行者が、誘導の声や規制線に気づかず、工事エリアに進入しそうになった。
2. 工事車両・作業員に関するヒヤリハット
重機の死角への進入: バックするダンプカーや重機の死角に警備員自身が立ち入ってしまい、運転手が気づかずに後退してきた。
合図の誤認: 工事車両の運転手への合図が不鮮明で、運転手が「進んで良い」と勘違いして急発進した。
3. 警備員自身の配置・行動に関するヒヤリハット
逃げ場の確保不足: ガードレールと道路の狭い隙間に立って誘導していたため、車が突っ込んできた際にかわすスペースがなかった。
死角での誘導: カーブの先など、一般ドライバーから見えにくい位置に立ってしまい、車が急に現れてひかれそうになった。

事故を未然に防ぐための3つのアプローチ
ヒヤリハットをただの「あぁ、怖かった」で終わらせず、具体的な行動に変えるための対策です。
「見せる」と「逃げ道の確保」(自己防衛)
大きく、明確な合図: ドライバーが迷わないよう、誘導灯や大旗の動作は「大きく、キレよく、早めに」行います。
安全なポジショニング: 常に一般車両・工事車両の双方から視認しやすい位置に立つこと。また、万が一車が突っ込んできたときに「どこに逃げるか(退避ルート)」を常に頭の中でシミュレーションしておきます。
アイコンタクトの徹底: 車両を誘導する際は、運転手の顔(目線)を見て、こちらの意思が伝わっているか確認します。
周辺環境の「360度警戒」
思い込みの排除: 「車は止まってくれるだろう」「歩行者は気づいているだろう」という予測は捨て、「止まらないかもしれない」「見ていないかもしれない」という防衛的な視点(かもしれない運転ならぬ、かもしれない誘導)を持ちます。
声掛けの私行: スマホを見ている歩行者や自転車に対しては、誘導灯だけでなく、早めに「お足元ご注意ください」「こちらでお待ちください」と明るくハッキリとした声掛けを行います。
チーム・現場全体での情報共有
ヒヤリハット報告の習慣化: どんなに小さな「ヒヤリ」でも、朝礼や終礼、ミーティングで隊員同士や施工業者と共有します。「あそこのカーブは車がスピードを落とさない」「あの時間帯は西日で見えにくい」といった現場固有の情報が、最大の防御策になります。
💡 安全へのワンポイント
交通誘導のプロフェッショナルは、「車を動かす」のではなく「車に安全に止まってもらう」ことを意識しています。現場の安全を守るためには、まず警備員自身の安全が確保されていることが大前提です。「ヒヤリ」とした瞬間を見逃さず、次の配置からすぐに改善していきましょう。
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